【書評】濱口桂一郎「日本の雇用と労働法」(日経文庫)

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本ブログの記念すべき第一冊目にはこの本をチョイスしてみました。

読んだ感じとしては、いい意味で教科書的で手堅い、という感じです。日本型雇用システムと労働法制が判例を交えて語られるので理解が深まります。

 

本書は、日本型雇用システムを「職務の定めのない雇用契約」として、これを中心に「年功賃金制度」「新卒採用」「定年制」、そして、日本型雇用システムの周辺の置かれた「女性労働者」「非正規労働者」「中小企業労働者」について語られています。

 

個人的には非正規雇用問題に関心があるので、この本は非常に役立ちました。なんといっても、判例が豊富に書かれていますし、雇用のあり方を明治時代、戦前まで遡りつつ順を追って書かれているのが理解が深まって良かったです。

 

ただ、読んでいて「なんだこりゃ、難しい…」と思ったのが、35~45頁のあたりですね。この「雇用契約」のあり方は一度読んだだけでは、正直よくわからなかったです。何度も同じ場所を読み返すうちに、だんだんわかってきた、という感じでした。

 

雇用契約はメンバーシップ契約だが、法律学的には間違い。なぜなら、日本国の民法は、雇用契約を労働に従事することと報酬の支払いを対価とする債権契約と定義しているから」

 

という趣旨のことを本書で書いてありまして、一瞬「うん?」となったわけです。

それもそのはず、日本だと法律では職務に定めのある「ジョブ型雇用契約」を念頭においてるものの、実際に世の中は職務の定めのない「メンバーシップ型雇用契約」が主流になっている。そして、裁判所での個々の判例は後者に依拠している、ということです。

 

このあたりは私の理解力がなってないせいのかもしれませんが、やっぱり一度ではよくわからなかったです。ことほどさように、日本型雇用システムと労働法制は微妙な齟齬というか難渋さがある気がしました。